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自民党の国際局長としてヨーロッパ各国の党首会議(パリ)から政変中のソ連へとまわり、帰りの飛行機の中で妻が、「今、何を考えているかわかるわよ。ジャムに会いたいんでしょう。」と言った。まさに図星だ。三人の子供達もいるが、やっぱり会いたいのはジャムに間違いない。
成田に着いて、一通り留守中の政務報告を終えた。秘書が、「アノ・・・ジャムが・・・。」と口ごもる。「どうした、ジャムがどうした。」と詰問する私に、某秘書の実にくだらぬミステイクでジャムの前足を骨折させてしまったとのニュース。私は発狂しそうになった。いや、一時的には発狂していたのかもしれぬ。それからの数日、入院中のジャムを思うとメシがノドを通らない。
さいわい、救急処置をしていただいた千駄木の出井先生、小暮先生のご紹介で入院させていただいた東大の佐々木先生のおかげで、まだ多少足の使い方がおかしいものの、元気あり余る本来のジャムにもどってくれた。
思えば、人間とイヌやネコとの愛情深き付き合いこそ、造物主の配慮だったのではあるまいか。もしイヌとネコという動物が存在していなっかたとしたら、家庭だけではなく、社会も国家も、あるいは人類の運命も大きく異なったものになっていただろう。
ジャムはポメラニアンの雄、まだ一歳に満たぬ若者で、ふとした経緯から、かの山本海苔店の若社長に譲っていただいた。
私ども一家が大のイヌ好きであることはご承知だろうし、子どもの頃からイヌたちと過ごしてきた。でもジャムは格別なのだ。というのは、今までのイヌはどんなに可愛がってもすべて、決して私を第一順位に置いてくれず、私はいつもNo.2かNo.3であった。ところがジャムの第一順位は間違いなくこの私。夜は必ず私の枕元で寄り添って寝る。私はこの快感に酔いしれ、ジャム狂いの毎日をすごしている。
そして退院後数週間にして舞い込んできた文部大臣の椅子も、何かジャムが持ってきてくれたように思えてしまうのだ。
(この原稿は文京愛犬家協会平成4年3月10日「とおぼえ」に寄稿したものです)