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ジャムはもうじき四歳の誕生日を迎える。しかし、そのやんちゃな振る舞いとイタズラぶりは衰えを知らぬようだ。およそ訓練やしつけとは全く無縁で、甘やかし放題、人間でいえば徹底した自由保育で可愛がってきた結果なのだろうが、ジャムに内在している個性が限りなくいとおしいと私は一人で満足し切っている。
私は、この世の中で一番可愛いのは子犬だと信じている。しかし、子犬の愛らしさは成長とともに、徐々に大人の落ち着きに変わっていってしまう。とりわけ一般にいう“りこうな犬”や訓練を受けた犬は、その変化が早いのではないだろうか。ポメラニアンは大人になってもベビーフェイスだし、子犬にように毛がモコモコしている。その上、精神的にも子どものままのジャムは、まさに永遠の子犬なのではないかと喜んでいるのだ。
生後何十日かで我が家に来たとき、じゃれついては家人の手や足に咬みつく癖にビックリした。それだけではなく机をかじり、ふとんから綿を出し、電話のコードを咬み切った。電話が鳴って受話器をとる。おかしい。音が全くしない。よくみるとコードレスフォンになっている。そんなこともしばしばだった。でも子犬だからそのうちに咬まなくなると皆が言うし、「歯がかゆいからだ」との解説あった。だが、何年たってもジャムの行動は変わらなかった。机や電話はかじらなくなったが、相変わらず手足に咬みついてくる。機嫌よくじゃれている時はいいが、ジャムの宝物に近付いて咬まれると血が吹き出してしまう。
ある夜、酔っ払ってジャムと遊んでいるうちにねむくなってきたので、ジャムを抱いてベッドに入った。枕の下に宝物(お菓子)が隠してあるとはツユ知らず、見事に左目の上に咬みつかれてしまった。そして日本医大で七針もぬわねばならなかったのだ。それでもジャムを抱き続ける私を変人だと人はいう。咬まれてもいとしさが増していくのだから仕方がない。何でもいうことをきく素直な犬より、いつまでも子どものままのウルトラわがまま犬が、私には似合うのである。
一年前、噂を聞きつけてきたテレビ局が二社あって、ジャムは二回もスターとなり、私の鼻は一層高くなった。しかし、ジャムがディレクターに咬みつき、彼の手から血が浸み出るのが映し出された結果、我が家の来客はだいぶ減ったようでもある。
(この原稿は文京動物愛護協会平成7年3月10日「とおぼえ」に寄稿したものです)