![]()
先日、日本橋の料飲組合の新年会が三越の特別食堂で開かれたので、私は三越のエレベーターに乗った。そのとき中年の品に良い御婦人が「お宅のポメラニアンは元気?」と声をかけてこられた。ジャムをご存知ならば文京区の住人かと思い、「地元の方ですか?」と問うてみると、「いいえ、何度かテレビでお見受けしましたから」とおっしゃる。そういえば同じ番組の再放送も含め、ジャムは5回ほどテレビに出ている勘定になる。よほど犬好きなのだろうと思いつつ、いや、ジャムの可愛らしさが目に焼きついたのだろうと親バカぶりを発揮していると、「よく噛み付くようですね」ときた。どうやら目に焼きついていたのは可愛らしさより、噛むことの方だったようだ。そういえば、あるテレビ局がジャムの取材にきて取材クルーの中の女の子が噛まれて血がにじみ、女房がバンドエイドを貼ってあげたシーンが放映されたことがあったっけ。区議のM先生は、大の天ぷら好きで、そのうち私が自慢の天ぷらを揚げて、ごちそうしようということになっていたのだが、その番組をご覧になり、「ジャムちゃんに噛まれたら大変だ」と、いまだに拙宅にお見えにならない。
現在文部省の局長をしておられるTさんは、私の大臣のころ総務課長として私の面倒をみてくださった。そのTさん、相当な酩酊状態で拙宅に寄られたとき、ジャムをからかっては噛まれ続けていた。ジャムも酔っ払い相手なので本気ではなかったと思うが、噛まれて喜んでいるTさんの姿は珍しいものだった。Tさんは翌日、文部大臣室に来られ、「きのうの夜、大臣のお宅で何か動物に噛まれたらしく、手が傷だらけなんだけど、いるのは犬ですかネコですか」と秘書官に尋ねられたという。それほどの酩酊状態というのも、すごい話ではあるけれど、ジャムの毛は、ものすごくフサフサしているので、後から見ればヒマラヤンに見えるのかもしれないと、妙に納得した記憶がある。
その“噛む犬”と私の仲は極めて順調であり、ジャムはそろそろ7歳を迎える。自宅では、いつもジャムを抱っこばかりしており、女房にいわせると「3人の子どもを抱いていた総時間の、100倍ぐらいジャムを抱いている」となる。案外、当っているかなと自分でも思う。
(この原稿は文京動物愛護協会平成10年3月10日「動物と住む街」に寄稿したものです)